成年後見な人々 4 孤高の人⑭
年の瀬に向って、時はあわただしく流れていった。
それにつれて、田山さんの抗がん剤が、どんどんきついものへと変えられていった。
おしせまった28日、私は、主治医に呼ばれて、田山さんの入院する病院を訪ねた。もう、桜を見ることはないだろうが、そう急にというわけでもないという話だった。
私は田山さんの病室をおとずれた。私の事務所の事務員が、ここ3日ほど、田山さんの依頼に応じてりんごやみかんを届けていた。私も、田山さんからの電話で、枕元におく、ポットを買ってきたのだった。
私を見ると、田山さんは、すっかり細くなった顔に黒目がちの目を向けて
「いや、世話、かけまんな」
といった。
「ポットですけどね、こんなんでどうです?」
と、私は、持ってきたポットを見せて言った。
「ちゃうがな、わしが飲みたいのは、お湯やのうて、冷たいもんや、氷の入るもんや」
と顔をしかめて言った。
「ああ、すみません、氷の入るものって、前に入院されたときに、お持ちしたようなものですか?」
「ええっとな・・・」
田山さんは、傍にあった薬の袋を裏返して、鉛筆を手に取った。
「こんな形のな・・・」
と書きかけて、
「ああ、もう、どうでもようなったなあ」
と鉛筆を放して目を閉じられた。
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